用途
ゴルフボールカバー、成形品、フィルム、押出コーディング、自動車用モール、改質材など
- 概要
- 銘柄表
- 物性
- 用途
- 製品安全情報
はじめに
ハイミラン®はダウ・ケミカル社の技術に基づき、三井・ダウ ポリケミカル株式会社によって製造されるアイオノマー樹脂です。
ダウ・ケミカル社は、エチレン-メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂・サーリン™(SURLYN™)を開発(開発時は当時のデュポン社)し、世界各国に供給しています。
日本でも、当社がサーリン™(SURLYN™)の輸入販売を行っていましたが、国内市場の拡大に伴い、1978年秋から当時のデュポン社と同じ方法でアイオノマー樹脂の製造を開始し、ハイミラン®という商品名でこれを販売しています。
* サーリン™(SURLYN™)はダウ・ケミカル社またはその関連会社の商標です。
特長
- 非常に強靭で、適度の弾力性と柔軟性をもつ。
- 耐寒性が大変優れている。
- 耐摩耗性に優れている。
- 透明性が良好である。
- カルボン酸基をもっているので、金属等への安定した熱接着性がある。
- 優れた耐油性を有している。
- 耐ストレスクラッキング性に優れている。
- 顔料、充填材との相溶性に優れている。
- ポリエチレンと同様の可塑成形ができる。
ハイミラン®はポリエチレンの分子鎖にカルボン酸基の側鎖があり、そのカルボン酸基の一部が金属陽イオンによって分子鎖間で架橋されている構造をもっています。この二つの構造上の特徴によって多くの優れた性質が生まれます。特に金属イオンによる架橋結合は、一般の化学結合による架橋と異なって、熱によって結合力が変わり、加熱することにより結合力が弱くなり、冷却すると強くなる特長があります。
例えば、温度と流れ性の関係では、図のようになり、熱によってイオン架橋が弱くなるため一般の熱可塑性樹脂と同様に成形でき、かつ架橋の存在のために溶融時でも溶融強度、溶融延伸性といった点で低密度ポリエチレンより優れています。固化した状態ではイオン結合がさらに強くなりますので、強靭性が大きくなります。
ハイミラン®と他材料との物性比較
性質 | 試験法 ASTM |
ハイミラン® | 参考 | ||||
低密度 ポリエチレン |
硬質 PVC |
ポリプロ ピレン |
ポリカーボ ネート |
ナイロン | |||
比重 g/㎥ |
D-792-60T | 0.93~0.97 | 0.91~0.93 | 1.32~1.45 | 0.90~0.91 | 1.20 | 1.13~1.16 |
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機械的性質 | |||||||
破断点抗張力 MPa |
D-412-51T | 20~35 | 6.9~16 | 34~62 | 24~39 | 55~66 | 39~64 |
伸び % |
D-412-51T | 300~500 | 100~650 | 2~40 | 250~700 | 60~100 | 25~300 |
アイゾット衝撃強度 (ノッチ)J/m |
D-256 | >830 | >830 | 4.9~80 | 31~110 | 640~850 | 53~200 |
エルメンドルフ引裂 N/cm |
- | 78~300 | 240~780 | 39~2700 | 20~5900 | - | - |
曲げ剛性率 MPa |
D-790 | 70~370 | 120~250 | 2500~2800 | 1000~1400 | - | 520~2500 |
表面硬度 RockWell Shore |
- D-785 |
- D56~68 |
R25~35 D41~46 |
R104~115 A70~90 |
R85~110 - |
M78 - |
R103~118 - |
熱的性質 | |||||||
VICAT軟化点 ℃ |
D-1525 | 57~80 | 85~97 | 80~100 | 140~150 | 150 | - |
荷重熱変形温度 ℃(at0.45MPa) |
D-648 | 43~49 | 41~51 | 54~78 | 100~110 | 143 | 127~170 |
線膨張係数 cm/cm/℃×105 |
D-696 | 11~13 | 16~18 | 7.2~7.8 | 10~15 | 3.7~7.0 | - |
脆化温度 ℃ |
D-746 | -50~-112 | <-76 | -29 | -23 | <-100 | -57 |
電気的性質 | |||||||
体積固有抵抗 Ωcm |
D-257 | E+16~E+18 | E+17 | E+15 | >E+16 | E+17 | E+12~E+15 |
誘電率 (60Hz) |
D-150 | 2.3~2.5 | 2.3 | 3.4 | 2.3 | 3.17 | 4.9~10.0 |
力率 (103Hz) |
D-150 | 0.001~0.004 | <0.0005 | 0.02 | 0.0008 | 0.0009 | 0.06~0.11 |
耐電圧 kV/mm |
D-149 | 35~43 | 21~35 | 48 | 21~29 | 17 | 19~24 |
透過性 | |||||||
水蒸気 (0.1mm・g/m2・day) (35℃,95%RH) |
- | 4~8 | 4~6 | 16 | 0.24~2.8 | 13~15 | 30 |
酸素 10-16mol・m/m2・S・Pa |
D-1434 | 6.0~10 | 4.0~8.0 | 0.3 | 12 | 0.2~3.0 | 0.5 |
炭酸ガス 10-16mol・m/m2・S・Pa |
D-1434 | 20~40 | 40 | 1.0 | - | - | 3.2 |
窒素ガス 10-16mol・m/m2・S・Pa |
D-1434 | 1.3~3.4 | 2.0~4.0 | - | - | - | - |
耐薬品性 | |||||||
弱酸 | D-543 | sA | R | R | R | R | R |
強酸 | D-543 | sA | sA | R | sA | sA | A |
弱アルカリ | D-543 | R | R | R | R | R | R |
強アルカリ | D-543 | R | R | R | R | A | R |
炭化水素溶剤 | D-543 | S | S | S | sS | sA | R |
ケトンアルコール | D-543 | sS | R | D | R | R | R |
← Swipe →
R:耐える S:膨潤する A:侵される sS:やや膨潤する sA:やや侵される D:溶解する
(注)表示データは代表値であり、規格値としては採用できません。
ハイミラン®
ハイミラン®と他材料との物性比較
銘柄 | イオンタイプ | 項目 | メルトマス フローレイト |
密度 | 引張破壊 応力 |
引張破壊 ひずみ |
曲げ剛性率 | デュロメータ D硬さ |
ビカット 軟化温度 |
融点 | 脆化温度 | 光学的性質(1㎜厚)*2 | 食品衛生性 〇:収載(取得)×:非収載(非取得)-:未確認 1)弊社では食品疑似溶媒等による適合性の試験は実施しておりません。 2)収載(取得)であっても各種制限等がある場合もございますので、必ず弊社に詳細をご確認下さい。 3)食品衛生性情報は必ずしも各法規制(含 自主基準)の最新版を反映しているものではなく、 必ず弊社に詳細をご確認下さい。 |
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Haze | 全光線透過率 | ||||||||||||||||
測定法 | JIS K7210 :1999 (190℃, 2.16㎏荷重) |
JIS K7112 :1999 |
JIS K7161-1:2014 K7161-2:2014*1 |
JIS K7161-1:2014 K7161-2:2014*1 |
JIS K7106 :1995 |
JIS K7215 :1986*3 |
JIS K7206 :1999 |
(DSC) | JIS K 7216 :1980 |
JIS K7136 :2000 |
JIS K7361-1 :1997 |
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単位 | g/10min | ㎏/m3 | MPa | % | MPa | - | ℃ | ℃ | ℃ | % | % | 国ポジティブ リスト |
JCIIセンター ポリ衛協型 確認証明書 |
米国FDA 21CFR |
欧州 PIM |
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1706 | Zn | 0.9 | 960 | 33 | 300 | 310 | 68 | 65 | 88 | -60 以下 | 2.6 | 92 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1705 | Zn | 5.0 | 950 | 31 | 400 | 200 | 63 | 65 | 91 | -60 以下 | 5.6 | 91 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1702 | Zn | 16 | 950 | 27 | 400 | 170 | 62 | 63 | 90 | -60 以下 | 7.4 | 91 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1650 | Zn | 1.5 | 950 | 30 | 400 | 250 | 63 | 74 | 96 | -60 以下 | 7.8 | 87 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1557 | Zn | 5.5 | 950 | 24 | 400 | 260 | 63 | 72 | 95 | -60 以下 | 16 | 88 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1554W | Zn | 1.0 | 960 | 32 | 400 | 270 | 65 | 71 | 95 | -60 以下 | 10 | 88 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1652 | Zn | 5.5 | 940 | 24 | 500 | 160 | 58 | 80 | 98 | -60 以下 | 27 | 84 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
AM7326 | Zn | 1.1 | 950 | 30 | 400 | 280 | 62 | 83 | 101 | -60 以下 | 17 | 85 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1855 | Zn | 1.0 | 960 | 32 | 400 | 92 | 60 | 56 | 86 | -60 以下 | 5.7 | 91 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1707 | Na | 0.9 | 940 | 33 | 300 | 310 | 67 | 60 | 89 | -60 以下 | 3.5 | 92 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1605 | Na | 2.8 | 940 | 35 | 400 | 320 | 68 | 66 | 92 | -60 以下 | 3.3 | 92 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1555 | Na | 10 | 940 | 23 | 400 | 240 | 63 | 72 | 95 | -60 以下 | 15 | 90 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
1601 | Na | 1.3 | 940 | 31 | 400 | 230 | 63 | 73 | 97 | -60 以下 | 6.8 | 91 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
AM79021 | Na | 2.8 | 940 | 29 | 400 | 250 | 63 | 75 | 97 | -60 以下 | 10 | 88 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
LDPE | 0.9 | 920 | 17 | 600 | 170 | 48 | 93 | 109 | -60 以下 | 96 | 78 | ||||||
EVA | (VA10%) | 9.0 | 930 | 15 | 700 | 72 | 41 | 71 | 96 | -60 以下 | 89 | 85 |
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*1 引張試験 試験片の種類及び試験速度:JIS K 7161-2 / 1BA / 20
*2 光学的性質の試験片作成条件(JIS:K7151、冷却方法・B法)
*3 測定機:Asker社製 P-2 センサー降下速度10.0㎜/s
(注)表示データは、特定条件下で得られた測定値の代表例です。規格値としては採用できません。銘柄選定の目安としてご使用ください。
ハイミランはグレード間の差が大きいので、使用グレードの決定に際しましては弊社にご相談ください。
・ 本表には代表的銘柄のみ記載しております。本表にない銘柄の有無については、
弊社までお問い合わせ頂きますようお願い致します。
製品安全情報
1.医療用途
この製品を人体への永久移植、又は体液や体内組織との永久接触状態で使用される医療用途には使用しないで下さい(この場合、永久とは30日以上をいいます)。
また、医薬品医療機器等法で規定される医療用具などその他の医療用途に使用される場合は、事前に弊社にご相談ください。
2.食品包装用途
食品用器具・容器包装材に係る国内外法規への収載(適合)状況につきましては、お手数ではございますが弊社までお問い合わせ下さい。
一部のHimilan®アイオノマー製品について、海外においてはDow社がSurlyn®の商標で販売しています。
ヒートシール性
ハイミラン®の最大の特長は、実用上、非常に優れたヒートシール機能を有することです。
特にハイミラン®のホットタック性はヒートシール材として最高レベルのものであり、例えばハイミラン®のホットタック強度は、低密度ポリエチレンの数倍もあり、しかもその優れたホットタック強度が、低温から高温まで幅広いヒートシール温度域で得られます。
その他ハイミラン®は低温シール性・異物付着シール性など全ての点で低密度ポリエチレンより数段優れています。すなわち、ハイミラン®はヒートシール温度条件幅も広いヒートシール用樹脂です。
ハイミラン®の優れたヒートシール性は、高速自動製袋充填包装での包装速度の向上、シールロスの削減をもたらし、また真空包装やガス置換包装での包装の信頼度の向上に役立ちます。
- 測定方法
-
- 構成:PET(12μm)/LDPE(15μm)/ 評価樹脂(30μm)
* LDPE:MFR=7.2,d=917、mPE:MFR=7,d=912 - 加工樹脂温度:LDPE・mPE・ニュクレル※…295℃、ハイミラン®…300℃
- ヒートシール条件:0.2MPa×0.5sec、シールバー幅…10mm
- ヒートシール強度測定条件:剥離速度…300mm/min、
剥離角度… 90°(T型)、試験片幅…15mm
- 構成:PET(12μm)/LDPE(15μm)/ 評価樹脂(30μm)
- 測定方法
-
- 装置:テラー社製 モデルHT ホットタックヒートシールテスター
- 構成:紙(50g/m2)/LDPE(20μm)/AL箔(7μm)/AC+オゾン 評価樹脂(20μm)
* mPE:MFR=8,d=901、ハイミラン®・ニュクレル*はAC+オゾン処理無し - 加工樹脂温度:mPE・ニュクレル*…295℃、ハイミラン®…310℃
- ホットタック強度:ヒートシール後、185ms経過した時点で測定
接着性
銘柄選定指針
ハイミラン®は、カルボン酸基をもっていますので、金属類やナイロンなどに対し、熱溶融接着が可能です。
例えば、ハイミラン®はアルミ箔に対しプライマーなし(押出コーティング法)で良好な接着力を示します。また共押出法でナイロンと接着させることができます。
表: 押出コーティング法におけるアルミ箔に対する接着性 (アンカーコーティングなし)
ラミネート温度 | |||||||
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315℃ | 280℃ | ||||||
ラミネート厚さ (μm) | 15 | 20 | 30 | 40 | 20 | 40 | |
接着力 | ハイミラン® 1652 | 2.5 | 3.4 | 4.4 | 5.4 | 2.5 | 4.4 |
(参考) LDPE | ー | 1.5 | ー | 3.4 | 0 | 0 |
単位:N/15mm
- 測定方法
-
- 構成:紙(50g/m2)/LDPE(20μm)/Al(9μm)/評価樹脂(20μm)
* LDPE:MFR=8,d=917、mPE:MFR=11,d=906 - 加工樹脂温度:ニュクレル※・LDPE…290℃、ハイミラン®…293℃、mPE…287℃
- エージング条件:23℃×50%RH
- 接着強度測定:剥離速度…300mm/min、剥離角度…90°(T型)、試験片幅…15mm
- 構成:紙(50g/m2)/LDPE(20μm)/Al(9μm)/評価樹脂(20μm)